【イギリスの美術館・博物館】国の至宝!ロンドンナショナルギャラリーの見どころ The national gallery
ロンドンナショナルギャラリーは、トラファルガー広場のすぐ目の前にあり、
ロンドン中心部に位置する絵画の国立美術館です。
個人のコレクションを国が買い上げたことから始まったナショナルギャラリーですが、
13世紀半ばから20世紀初頭まで、約2,300点のコレクションを保有しています。
国立美術館としての所蔵数はあまり大きな規模ではないものの、
フェルメール、ゴッホ、ヴァン・ダイクなどの絵画が数多く展示されており、さらに企画展以外は入場料も無料で見られるので、ロンドンに来たら、ぜひ一度はおすすめしたい場所です。
ロックダウンの再開後に訪れてみて、とくに興味深かった
3つの見どころ(+おまけ)をご紹介します。
見どころ-1 レオナルドダヴィンチの岩窟の聖母
入口から階段を上がって左に行くと
中世ヨーロッパの宗教絵画の部門になっており、
そのほんのり薄暗くなった一角に、
ひときわ目をひくレオナルドダヴィンチ作「岩窟の聖母」が展示されています。
未完で終わらせることが多く、現存作品数が限られている中でも残っているレオナルドダヴィンチの貴重な大型作品の一つです。
特徴的なミステリアスなほほ笑みをたたえていますが、絵画自体にも、いまだに多くの謎があるそうです。
この絵画は同じ構図で、
ルーブル美術館所蔵とナショナルギャラリー所蔵の2つのバージョンが存在しており、元々はミラノの教会に納める予定だったのが揉めて、最初(ルーブル版とされる)のほうは売ってしまったため、その代わりとして制作されたと言われており、ロンドン版の方は後に描かれたとされています。
登場人物(聖母マリア、キリスト、洗礼者ヨハネ、天使)は変わらないものの、
ところどころ異なる点もあり、ロンドン版の方は、マリアの横にいるのがキリストではなくヨハネを示す持ち物(ほそい十字架)が加わっていたり、天使が指をさしていた右手の部分がなくなっていたり、など、なぜ変更を加える必要があったのか?などの詳しいことははっきりとわかっていません。
また、近年ナショナルギャラリーの調査によって、
もともとの下絵は全く異なる構図(こちらから動画が見られます)だったことも判明し、なぜそのような必要があったのかも謎となっています。
さらに同じコーナーには、いまだに完成品はみつかっていない「聖アンナと聖母子と幼児聖ヨハネ」の下絵も展示されています。
こちらも指が場面としては不自然に天を向いていて、しかもあえてシンプルに描いて際立だたせているなど、見ていてとても不思議な雰囲気があります。
「岩窟の聖母」の絵画の方が修復されたのは10年前くらいの比較的最近のことなので、
せっかくの鮮やかで深く美しい色味を堪能しながら、どういう意味があったのかを想像してみるのも楽しいです。
見どころ-2 レンブラント祭り!
入口から階段を上がって反対に右に行くと、16世紀以降の絵画を鑑賞することができます。
カラヴァッジョ、ルーベンス、ティツィアーノなど、錚々たる巨匠がならんでいて、
どこから見たらいいか分からなくなるくらいです。
そのなかでもおすすめしたいのが、光と影の魔術師、レンブラントのお部屋です!
壁いっぱいにレンブラントの絵画が並んでいます。
若い時から晩年に至る時まで、自画像を多く描いていることでも有名ですが、ナショナルギャラリーでも、レンブラントによる、自画像や人物のポートレートが多数展示されています。
一つの光源からとらえるのではない、光と影を巧みに取り入れた表現が特徴的でグッときます。
特に気になったのが、こちらの最晩年にあたる自画像。
若い頃の自画像に比べて、
なぜこんなに悲しいような、でも
達観しているような表情をしているんだろう?と、とても気になりました。
後で調べてみたところ、
レンブラントは若くして名声を得ますが、
晩年は浪費癖や愛人など泥沼の裁判もあり家や財産、パトロンも失い、
さらにこの絵画が制作された年、レンブラントの亡くなった年でもある1669年の前年には、
唯一成人した息子も先に亡くなっていたようです。
そのような背景を知った上で見ると、
内面まで抉り出して平面の絵画におさめられていることに改めて感嘆します。
見どころ-3 ゴッホのひまわり
19世紀、20世紀のコーナーになると、
時代が近代に近づいてくるにつれて、モネやセザンヌ、スーラなど、
こちらもまた名作揃いで
絵画のテーマや描き方もさらに多様化していく変遷を見ることができます。
自由になってゆく分、
他の時代よりもバラエティがあり、展示の終盤で少し疲れてくるところに、
見ていて特に楽しくなります。
バランスよく名作絵画が並んでいるナショナルギャラリーでは、
ゴッホといえばひまわり、ひまわりといえばゴッホでお馴染みの、
世界に7枚あるゴッホ作「ひまわり」の1つを見ることもできます!
構図としては東京のSOMPO美術館で見られるひまわりと似ていますが、
東京のは5番目、ナショナルギャラリーは4番目の作品とされています。
南仏のアルルで芸術村をつくることを理想として、
ゴーギャンとの共同生活を待っていたころに描かれたそうで、
黄色は、幸せや、太陽が降り注ぐプロバンス地方を表しているそうです。
色々な画家の絵画が並んでいるなかでも、
とくにゴッホの絵は厚塗りで勢いがあるのが特徴的なので、
実際に観に行くことで特に写真だけでは分からなかった細部まで
息づかいが感じられ、とても興味深いです。
ひまわりのすぐ近くには他のゴッホ作品も展示されていて、合わせて楽しむことができます。
特に、蝶の舞う庭を描いた作品は、手入れもされていない一面雑草の庭がモチーフでも、
ゴッホが描くとそれぞれ一つ一つが生き生きと見え、
エネルギッシュで生命感に満ち溢れています。
この作品が自ら亡くなった年に描かれたもの、ということが信じられません、、
ビビットな色遣いがかわいいカニも隣にあり、
こちらはなんと北斎によるカニの木版画にゴッホが影響を受けて描いたと言われています。
他にもゴッホは浮世絵コレクターだったり、
ジャポニズムに憧れをいだいていたといわれていますが、
ゴッホにとって、見たことのない日本は理想郷だったのでしょうか?
おまけ イギリスの黒歴史も、、
「怖い絵」の本でも有名になった「レディ・ジェーン・グレイの処刑」という絵画。
こちらも、ナショナルギャラリーの所蔵となっていて見ることが可能です。
描かれたのはだいぶ後(1834年)になってからですが、
16世紀半ば、16才だったジェーン・グレイが、
イングランド史上初の女王として即位したにもかかわらず、
政治の争いに巻き込まれてわずか9日間で廃位となったのち
ロンドン塔に送られた歴史に基づく、処刑直前の場面を劇的に描いています。
長い歴史の中で、こうしたダークな出来事も多くあったイギリス。
うす暗い画面に対して純白な衣装を身にまとっていることにより、
ドラマチックな印象がさらに引き立っています。
実際には外で行われていた、など、
あえて史実と変更されている箇所もありますが、
最初にこの絵が発表された際は大反響をよんだそうです。
ナショナルギャラリーから実際のロンドン塔までの距離も近いので、
合わせて訪れるとさらに印象深いかもしれません。
まとめ
ナショナルギャラリーは、年代・地域などカテゴリ分けされてバランスよく並んでいて、
西洋絵画の変遷の歴史が伝わってくる、壮大な立体教科書のような場所だなと思います。
ヨーロッパの大陸に比べると遅れていたとされるイギリス絵画を反映してか、
全体的には国外の作家が多いですが、
地理的に近いヨーロッパでは、それぞれのスタイルがお互い影響しあって
発展したんだろうなということが感じられました。
ただ、18世紀、「The ベルばら!」な華やかなロココ文化がフランスで流行っていた頃、
海を隔てたイギリスにおいては、歴史的にフランス嫌いなこともあってか、
自然の風景画や、ホガースなどの日常の皮肉っぽい絵画が流行っていたそうです。
鑑賞していてあまりのギャップが面白く、ガーデニング好きだったりブラックジョーク好きなところとか、今につながるイギリスっぽいのかな、ということを妙に納得しました。